長いあいだ「眠っている」ように動けなかった患者たちが、ある新しい薬で数十年ぶりに“目覚める”――。実話をもとにした感動作です。この記事では、あらすじからその背景、そして「生きるとはどういうことか」というテーマまでを、やさしく紹介します。
公開:1990年 国:アメリカ ジャンル:ヒューマンドラマ(医療ドラマ) 監督:ペニー・マーシャル
1969年、ニューヨークのある病院。ここには、意識はあるのに体をほとんど動かせず、まるで眠り続けているように見える患者たちがいました。
研究熱心な医師セイヤーは、ある新しい薬がこの患者たちに効くのではないかと考えます。そして患者のひとりレナードに試したところ、彼は数十年ぶりに目を覚まし、ふたたび話し、歩き、世界を感じはじめます。
その“奇跡”のような目覚めは、医師にも患者にも、大切なことを問いかけていきます。
この映画は、イギリスの脳の医師オリヴァー・サックスが書いた同じ名前の本(1973年)をもとにしています。サックス医師が実際に体験したできごとが、物語のベースになっているのです。
➡ 映画の中の医師セイヤーは、このサックス医師をモデルにしています。
患者たちは、昔世界中で流行した「嗜眠性脳炎(エコノモ脳炎)」という病気の後遺症をかかえていました。この病気は1917年ごろから世界に広がったと言われています。
助かった人の中には、その後、自分の意思で体を動かすことがとても難しくなり、長いあいだ「固まった」ような状態で過ごす人たちがいたのです。
映画で使われる薬は「L-ドーパ(レボドパ)」。これは、体が動かしにくくなる「パーキンソン病」の治療にも使われる薬です。この薬が、眠っていた患者たちを一時的に“目覚めさせた”のでした。
🌱 「生きている」ってどういうこと?
眠っていた人が目を覚ましたとき、私たちはあらためて気づかされます。話すこと、歩くこと、だれかと笑い合うこと、外の空気を感じること――ふだんは「当たり前」すぎて気にもとめない一つひとつが、じつはとてもかけがえのないものだ、ということに。
🩺 「病気」ではなく「その人」を見る
医師セイヤーは、患者を“症例(データ)”としてではなく、ひとりの人間として見ようとします。名前をよび、好きな音楽をかけ、話しかける。すると患者に反応が生まれます。「人として接すること」の大切さが、この映画の中心にあります。
➡ 医療は「体を治すこと」だけでなく、「その人の人生に向き合うこと」でもある、と教えてくれます。
笑わせる役で大人気だった俳優ですが、この映画では正反対の、内気でまじめな医師を静かに演じました。代表作に『いまを生きる』『グッド・ウィル・ハンティング』などがあります。
体が動かない状態から目覚め、そしてまた変化していく――という、とても難しい役を、指先や表情の小さな動きだけで演じきりました。この演技はアメリカのアカデミー賞(主演男優賞)にノミネートされました。
🏆 映画そのものも、アカデミー賞の作品賞などにノミネートされました。
もとは女優として活躍し、その後監督になった人です。子どもと大人が入れかわる映画『ビッグ』(1988) を大ヒットさせ、女性監督として大きな注目を集めました。人の心をていねいに描くのが得意な監督です。
『レナードの朝』が公開された1990年(平成2年)は、今から約35年前です。
🌍 世界のできごと
- 前の年(1989年)に「ベルリンの壁」がこわされ、1990年には東西に分かれていたドイツが一つに統一されました。
- 世界中をつなぐ「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW=今のインターネットのもと)」の仕組みが考え出されたのも、このころです。
🗾 日本のできごと
- 大阪で「国際花と緑の博覧会(花の万博)」が開かれました。
- 家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」が発売され、大人気になりました。
目覚めたレナードは、まわりの人たちに大切なことを伝えようとします。それは――「元気な人ほど、働くこと・遊ぶこと・友情・家族といった、あたり前の幸せを忘れてしまっている」ということ。
「毎日をせいいっぱい生きること」の大切さを、レナードは身をもって教えてくれます。
🌅 今日のまとめ
『レナードの朝』は、ただの医療ドラマではありません。
- 本当にあった話(実話)をもとにした作品
- 「生きているとはどういうことか」を問いかける作品
- 患者を「病気」ではなく「ひとりの人」として見ることの大切さを描いた作品
- 名優デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの競演が光る作品
当たり前の毎日が、どれほどかけがえのないものか。観たあとに、そっと考えたくなる映画です。
原作を書いたオリヴァー・サックスは、脳や心の不思議を、一般の人にもわかりやすく伝えることで有名な医師・作家でした。『妻を帽子とまちがえた男』など、多くの本を残しています。
📚 参考資料(主な出典)
- Encyclopædia Britannica「Awakenings」「Oliver Sacks」「encephalitis lethargica」(britannica.com)
- オリヴァー・サックス『レナードの朝』(原作)
- 引用・参照:映画『レナードの朝』(1990年、監督ペニー・マーシャル)