2022年に映画の賞で世界一に選ばれた、家族の物語です。主人公のルビーは、耳の聞こえない家族の中で、たった一人、耳の聞こえる子ども。この記事では、映画のお話や俳優のことを知りながら、「自分の気持ちも、相手の気持ちも大切にする伝え方」をいっしょに考えます。
特集「アサーティブコミュニケーション」第1回の教材です。
CODA(コーダ)は、英語の Children of Deaf Adults の頭文字です。日本語にすると、「耳の聞こえない親を持つ、耳の聞こえる子ども」という意味で使われます。
主人公のルビーは、まさにこのCODA。お父さん・お母さん・お兄さんは耳が聞こえません。でも、ルビーには音が聞こえます。
ルビーは家族の中で、手話を使って家族とまわりの人をつなぐ「通訳」もしています。家族のお仕事を手伝い、学校にも通い、自分の友だちともすごす。たくさんのやくわりを持った女の子です。
「アサーティブ」は、ちょっとむずかしい言葉です。でも、考え方はとても簡単。
自分の気持ちをぐっとがまんするのでもなく、相手を言い負かすのでもありません。自分の気持ちも、相手の気持ちも、どちらも消さない。それがアサーティブな伝え方です。
アサーティブは「いつでもやさしくすること」ではありません。イヤなことは「イヤだ」と言っていいし、断ってもいい。ただし、相手を傷つける言い方をしない。ここがポイントです。
たとえば、友だちが自分の鉛筆を勝手に使ったとします。あなたなら、どう言いますか?
→ 気持ちは伝わるけど、相手を傷つけてしまうかも。
→ 自分の気持ちを大切にできていない。
→ 気持ちを伝えて、相手も攻撃していない。
「あなたはいつも〜!」より、「私は〜と思う」で始めてみよう。
❌「そんなのイヤ!」→ ⭕「私は今日はそれをやりたくないな」
❌「ぜったいこうする!」→ ⭕「私はこうしたいと思ってる。あなたはどう思う?」
ルビーは高校生の女の子。朝早くから家族の漁の仕事を手伝い、耳の聞こえない家族のために通訳もしています。
ある日、学校の合唱クラブに入ったルビーは、「歌うことが大好き」という自分の気持ちに気づきます。先生は「音楽の学校を目指してみないか」とすすめてくれました。
でも、家族はルビーの通訳がないと困ってしまう。「家族を大切にすること」と「自分の夢を大切にすること」。ルビーは、その間でなやみます。
さいごにルビーは、自分の気持ちを家族に伝え、家族もルビーの夢を応援しようとします。「どちらか一つ」ではなく、「どちらも大切にする方法」を、家族みんなでさがしていくお話です。
➡ このお話の中心にあるのが、「自分もOK、相手もOK」というアサーティブの考え方です。
🌊 舞台はどこ?
アメリカのマサチューセッツ州グロスターという、海の近くの町です。漁業(魚をとる仕事)でよく知られた町で、ルビーの家族もこの町で漁の仕事をしています。
📅 いつの時代?
『コーダ あいのうた』は2021年につくられた映画で、お話は今のアメリカがぶたいです。日本では2022年1月に映画館で公開されました。
このころ、日本では新型コロナウイルスのえいきょうで、マスクをつけたり、画面ごしに授業をしたりしていました。「人と人がつながること」が、あらためて大切に思われていた時代です。
アメリカの映画監督で、この映画ではお話づくり(脚本)と監督の両方をたんとうしました。
ヘダー監督は、この映画をつくるためにアメリカの手話(ASL)を自分で勉強しました。手話は、英語をそのまま手で表すものではなく、独自のルールを持つ言葉です。だから手話の専門家といっしょに、「このセリフを手話でどう表すか」をていねいに考えました。
この映画では、耳の聞こえない家族を、本当に耳の聞こえない俳優たちがえんじています。「障害をテーマにする」のではなく、「その人たちのふつうの毎日をえがく」ことを大切にした映画です。
イギリス出身の俳優。ルビーをえんじるために、およそ9か月もかけて、アメリカの手話(ASL)・歌・漁のしかたを練習してから撮影に入りました。
本当に耳の聞こえない俳優で、とても有名な人です。1986年の映画『愛は静けさの中に』で、ろう者として初めてアカデミー主演女優賞を受賞しました。
🏆 ろう者で初のアカデミー主演女優賞この人も本当に耳の聞こえない俳優。『コーダ あいのうた』の演技で、アカデミー助演男優賞を受賞しました。ろう者の男性の俳優として、初めての快挙でした。
🏆 ろう者の男性で初のアカデミー演技賞お兄さんのレオをえんじたのも、耳の聞こえない俳優です。
2022年のアカデミー賞(世界でいちばん有名な映画の賞)で、この映画は3つの賞を受賞しました。
- 🏆 作品賞その年の「いちばんの映画」に選ばれました。
- 🏆 脚色賞(きゃくしょくしょう)お話づくりがすばらしい、とみとめられました。
- 🏆 助演男優賞お父さん役のトロイ・コッツァーが受賞しました。
『コーダ あいのうた』は、インターネットの配信サービスでつくられた映画が、はじめてアカデミー作品賞をとった作品でもあります。「家族の映画」であるだけでなく、映画の歴史にも名前を残しました。
ルビーには、家族があります。そして、歌があります。さらに、学校・友だち・将来もあります。ぜんぶ大切。だから「どれか一つを選べばかんたん」という話ではありません。
ここで、アサーティブを思い出そう
→ 自分の気持ちをがまんする「受け身型」になっちゃう。
→ 相手の気持ちを考えない「攻撃型」になっちゃう。
→ ここから「どうしたら両方を大切にできる?」と考える。これがアサーティブ!
「自分の夢を持つことは、わがままかな?」
答えは簡単ではありません。自分の夢を大切にすることと、家族を大切にすることは、りょうほう大切にできることもあるからです。
映画を見ながら、「コミュニケーション探偵」になって、心に残った場面を1つえらんで書いてみよう。
今日、私は「______」と言ってもいいんだと分かりました。
でも、「______」も大切だと思いました。
これから私は、___________したいです。
🌱 今日のまとめ
「よい会話」ができる人は、話が上手な人ではありません。
- 自分の気持ちを大切にしていい。
- イヤなことは「イヤ」と言っていい。
- 自分の夢を持っていい。
- でも、相手にも気持ちや夢がある。
- だから、どう伝えたらお互いを大切にできるかを考える。
これが、『コーダ あいのうた』からもらえる、いちばん大切なプレゼントです。
「CODA(コーダ)」は音楽の言葉でもあり、曲のいちばん最後の部分を指します。「ろう者の親を持つ子ども(Children of Deaf Adults)」という意味と、「歌の物語」がぴったり重なった、すてきなタイトルなんです。