大きな事件は、ほとんど起きません。放課後の川辺で、2人の高校生がただ「しゃべる」だけの映画です。でも、その会話をよく見ると——受けて、返して、また受けて。会話は「キャッチボール」なんだと気づきます。この記事では、この映画から「会話をつなぐ力」を学びます。
特集「アサーティブコミュニケーション」第3回の教材です。
第1回では「自分の気持ちを伝える」、第2回では「相手の話を聴く」を学びました。今回はその2つが合わさった「会話のキャッチボール」です。
➡ 一方が投げっぱなしでも、受けっぱなしでもダメ。受けて、返して、また受ける。この行き来が「会話」です。
ボールを投げるのが「話す」、受けるのが「聴く」。よいキャッチボールは、相手が受け取りやすいボールを投げ、来たボールをちゃんと受けてから返すことです。
① 暴投:自分の話ばかりで、相手が受けられない
② 受けない:相手の話をスルーして、別の話をかぶせる
③ たたき返す:「それは違う」とすぐ否定する
セトとウツミの会話には、この3つがあまりありません。だから、いつまでも続きます。
大阪の高校2年生、瀬戸小吉(せと・こきち)と内海想(うつみ・そう)。タイプの違う2人が、放課後の川辺に座って、ただおしゃべりをして時間をつぶします。
派手な事件も、大きな冒険もありません。恋の話、くだらない言い合い、悩みごと……。関西弁のテンポのよい会話が、そのまま映画になっています。
➡ だからこそ、この映画は「会話そのもの」を観察するのにぴったりの教材です。
🏞 舞台はどこ?
大阪。川の土手(川辺)が、ほぼ唯一の舞台です。関西弁の「ボケ」と「ツッコミ」の掛け合いも、この映画の魅力です。
📖 原作は漫画
この映画は、此元和津也(このもと・かづや)さんの漫画が原作です(『別冊少年チャンピオン』で連載)。会話だけで物語が進む、めずらしい作品です。
関西の笑いでおなじみの「ボケ・ツッコミ」は、じつは高度なキャッチボール。ボケ(変なボール)を、ツッコミが上手に受けて返すから、会話がはずみます。
日本の映画監督。人間の細かな気持ちや、何気ない日常をていねいに描く作品で知られています。
『セトウツミ』でも、派手な演出にたよらず、2人の会話の「間」やテンポそのものを見せる作りになっています。
元野球部で、明るくよくしゃべる瀬戸を演じます。話をどんどん投げていく役です。
成績はいいけれど皮肉屋な内海を演じます。冷やかにツッコミながらも、しっかり会話を受け止める役です。
この映画を見るときは、「なぜ会話が続いているのか」を探してみましょう。たとえば、こんなやりとり——
※上のセリフは会話の流れを説明するためのイメージ例です(映画の実際のセリフではありません)。
- 続くとき「で、どうなったん?」のように、相手のボールを受けて、質問で返している。
- 止まるとき相手の話をスルーしたり、すぐ否定したりして、ボールが床に落ちる。
➡ 会話は「勝ち負け」ではありません。2人でボールを落とさず続けることがゴールです。
映画(またはあらすじ)の中で、「会話がうまく続いているな」と思った場面を1つえらんで書いてみよう。
🌱 今日のまとめ
会話は、うまいことを言う競争ではありません。
- 来たボールを、まず受け止める。
- 質問で返して、相手にボールをわたす。
- 相手が受け取りやすいボールを投げる。
- 「間」も会話の一部。あわてない。
- ゴールは「勝つこと」ではなく「続けること」。
これが、『セトウツミ』からもらえる、いちばん大切なプレゼントです。
この映画は75分と、短めです。大きな展開がないぶん、「会話の間」や「テンポ」そのものを味わえます。普段は意識しない、自分たちの会話のリズムを見つめ直すきっかけになります。