ゆめいっぱいの「おもちゃ工場」が、こわい「兵器工場」に変えられてしまう――。遊びと戦争、そして想像力について考えさせる、ふしぎな映画です。30年前に作られたのに、いまの世界を予言していたような一作。あらすじからテーマ、時代背景までをやさしく紹介します。
公開:1992年 国:アメリカ ジャンル:ファンタジー・コメディ(反戦映画) 監督:バリー・レビンソン
上映時間:約2時間(約121分) 主演:ロビン・ウィリアムズ 音楽:トレヴァー・ホーン & ハンス・ジマー 配給:20世紀フォックス
おもちゃ会社「ゼボ・トイズ」の社長が亡くなりました。本当なら、心のやさしい息子レスリーが会社をつぐはずでした。ところが社長は、軍人である弟リーランド・ゼボ将軍に会社をまかせます。
将軍は、おもちゃを使って戦争の訓練をしようと考え、ゆめいっぱいの工場を、こっそり兵器工場へと変えていきます。それに気づいたレスリーは、仲間といっしょに立ち上がります。
この映画は、子どもむけのようでいて、じつは大人に向けたメッセージがたくさんつまった、ふしぎな作品です。
この映画は公開された当時は人気が出ませんでした。でも今、「じつは時代を先取りした作品だった」と見直す人が増えています。
🎮 「ゲームのような戦争」を30年前にえがいた
映画の中で将軍は、子どもたちにゲームの感覚で本物の兵器(小型の飛行機など)を遠くから操縦させます。そしてそれが、本当に人を傷つける戦争につながっていきます。
これは、今の軍事ドローン(無人の飛行機を遠くから操縦する兵器)や、「ゲームのようになった戦争」を、まるで予言していたかのようです。
➡ 画面の向こうで遠くの出来事を「ゲームのように」動かすとき、人の心は何を忘れてしまうのか――。この映画が投げかける問いです。
『トイズ』は1992年の公開ですが、じつは1980年代のおわりから長い時間をかけて準備されました。ちょうどこのころ、世界では大きな出来事が続いていました。
① 冷戦のおわり
1945年からずっと続いていた、アメリカとソ連の対立(「冷戦」といいます)が、1991年に終わりました。「もう戦争の時代は終わるんだ」という希望が広がっていました。
② でも、新しい「未来の戦争」が始まっていた
その一方で、湾岸戦争(1991年)がおこり、コンピューターであやつる新しい兵器が登場。テレビには、まるでテレビゲームのような空からの攻撃の映像が流れました。「未来の戦争」が、現実になりはじめていたのです。
『トイズ』は、物語よりも美術デザイン(絵や色のうつくしさ)が高く評価されている映画です。おもちゃの世界は、まるで絵本やおもちゃ箱のようなパステルカラー。いっぽう、軍の施設になると、色は灰色・黒・無機質にかわります。
「平和」の色
「戦争」の色
➡ 色を見るだけで「平和」と「戦争」がわかる。これがこの映画のすごい工夫です。
この映画の絵づくりには、ルネ・マグリットという画家(ふしぎな絵をえがくシュルレアリスムの画家)の作品の影響があるといわれています。図工の時間にマグリットの絵をさがしてみると、あたらしい発見があるかもしれません。
『トイズ』は、子どもむけというより、大人へのメッセージがたくさんある作品です。おもなテーマは次の4つです。
アメリカ・ボルチモア出身。はじめはテレビ番組やコメディの脚本を書く仕事をしていて、エミー賞も受賞しています。その後、映画監督になり、1988年『レインマン』でアカデミー賞の監督賞を受賞しました。
ほかの代表作に『ダイナー』(デビュー作)、『グッドモーニング、ベトナム』、『バグジー』など。『トイズ』は、監督が長年あたためてきた「夢のプロジェクト」だったといわれています。
その場で自由にセリフを作る「即興(アドリブ)の天才」として人気のコメディアンでした。主人公レスリーは、まるで大きな子どものような人物。ロビンのやさしさ・即興・どくとくの動きが、そのままキャラクターになっています。
代表作は『アラジン』(ジーニーの声)、『ミセス・ダウト』、『いまを生きる』、『ジュマンジ』など。
『トイズ』が公開された1992年12月のすぐ前、11月には名作アニメ『アラジン』も公開されました。ジーニーの声もロビンです。ほぼ同じ時期に2つの大きな作品に出ていた、いそがしい年だったのです。
つめたい軍人の叔父を演じました。のちに『ハリー・ポッター』シリーズで、2代目のダンブルドア校長を演じることでも有名になります。この映画では、まったく逆のこわい軍人役です。
工場で働く女性で、レスリーの恋人になる役。のちに『フォレスト・ガンプ』や『ワンダーウーマン』などで活躍します。
レスリーの妹で、ふしぎでミステリアスな役。アカデミー賞に2度ノミネートされた名女優です。
のちにアカデミー主演男優賞をとる大スタージェイミー・フォックス(映画『Ray/レイ』2004年で受賞)。じつは、彼のはじめての長編映画が、この『トイズ』でした。
映画音楽は、トレヴァー・ホーンとハンス・ジマーの2人が担当しました。ゆめの世界と、不安な世界の両方を、音楽で表現しています。
ハンス・ジマーは、この後に『ライオン・キング』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ダークナイト』『インターステラー』など、世界的な名作の音楽を次々と作っていきます。もう1人のトレヴァー・ホーンは、1980年代を代表する有名な音楽プロデューサーでした。
この映画が公開されたころ、日本は大きな転換期(時代のかわり目)をむかえていました。1980年代のおわりまで続いた好景気「バブル」がこわれはじめ、これを「バブル崩壊」といいます。
- ゲーム任天堂の「スーパーファミコン」(1990年発売)が大人気でした。
- アニメ映画スタジオジブリ『紅の豚』が、1992年7月18日に公開されました。
同じ1992年、アメリカでは『トイズ』が、日本では『紅の豚』が公開。どちらも「大人が楽しめる内容」という点が、似ています。
これまでの『ジョーズ』『グーニーズ』と、この『トイズ』。3つをならべると、同じテーマが見えてきます。
| ジョーズ (1975) | グーニーズ (1985) | トイズ (1992) | |
|---|---|---|---|
| 主役は誰? | 大人たち | 子どもたち | 大きな子どものような大人 |
| こわいもの | 巨大なサメ(自然の力) | 悪党・大人の都合 | 兵器・戦争 |
| 科学や道具は? | サメを追う道具になる | 宝をさがす冒険の道具 | 遊びにも戦争にも使える |
| えがかれる心 | 恐怖と勇気 | 友情と冒険心 | 遊び心とじゅんすいさ |
➡ 3つに共通するのは「科学や道具は、人を幸せにも、不幸にもする」という問い。あなたの身のまわりの道具(スマホやゲームなど)は、使い方しだいでどう変わると思いますか?
🧸 今日のまとめ
- 『トイズ』は、遊びと戦争を対比させた、大人むけの反戦ファンタジー
- 美術デザインがとくにうつくしく、アカデミー賞2部門(美術・衣装)にノミネートされた
- 遠くから操作する戦争を30年前にえがき、「未来を予言した」と言われる
- 大切なのは、画面の向こうにも「いのち」があると忘れない心
30年前に作られたこの映画が問いかけるのは、「便利な道具を手に入れたとき、人は大切な何かを忘れていないか?」ということ。みんなで話し合ってみてください。
📚 参考資料(主な出典)
- Encyclopædia Britannica / Wikipedia「Toys (film)」「Barry Levinson」「Robin Williams」
- アカデミー賞(第65回・美術賞/衣装デザイン賞 各ノミネート)記録
- 参照:映画『トイズ』(1992年、監督バリー・レビンソン、配給20世紀フォックス)