人質を救い出すための作戦は、なんと「ニセモノの映画づくり」でした。まるで作り話のような、でも本当にあった救出作戦です。ただし、この映画自体にも、実際とは違う「脚色」が加えられています。この記事では、「実話にもとづく映画」を、どこまで事実として受け取ってよいかを考えます。
映画の最初に「実話にもとづく(Based on a true story)」と出ると、私たちはつい「全部本当にあったこと」と思ってしまいます。
➡ でも映画は、見る人を楽しませるために、出来事を短くしたり、盛り上げたり、変えたりすることがあります。この回では、その「差」に注目します。
- 📅 1979年11月イランの首都テヘランで、アメリカ大使館が占拠され、多くのアメリカ人が人質になりました。
- 🏠 逃げ出した6人占拠の混乱の中で6人の職員が脱出し、カナダ大使らの家にかくまわれました。
- 🎥 偽の映画『アルゴ』CIAのトニー・メンデスは、6人を「映画のロケハンに来たカナダの撮影スタッフ」に見せかけて出国させる作戦を立てました。
- ✈️ 1980年1月作戦は成功し、6人は無事に国外へ脱出しました。
当時は、救出はカナダの功績として発表され、CIAの関与は伏せられていました。CIAの役割が公にされたのは、1997年に機密が解除されてからです。
大使館から逃げた6人が見つかれば、命の危険があります。CIAで人質救出を専門にするトニー・メンデスは、「偽のSF映画をつくる」という大胆な作戦を思いつきます。
ハリウッドの映画関係者の協力で、本物らしく見せるために、脚本や宣伝、記者発表まで用意します。
メンデスはイランに入り、6人に「撮影スタッフ」としての身分を覚えさせ、空港での出国に挑みます。
『アルゴ』は高く評価された一方で、実際の出来事とは違う点も指摘されています。
- ① クライマックスの追跡空港で車に追われるような、息づまる場面は、盛り上げるための創作とされています。
- ② カナダの役割実際にはカナダ大使らが大きな役割を果たしましたが、映画ではCIAの活躍が中心に描かれ、「カナダの貢献が小さく見える」という批判がありました。
- ③ 人物の描き方登場人物の性格やセリフの多くは、映画のためにつくられています。
映画は「おもしろさ」と「事実」のどちらを優先すべきでしょうか。脚色があることを知ったうえで楽しむことが大切です。
アメリカの俳優・監督。この作品でアカデミー賞の作品賞を受賞しました(ほかに脚色賞・編集賞も受賞)。
メンデスの上司。CIA内部で作戦を支えます。
偽の映画を「本物らしく」見せるために協力するハリウッドの人々。グッドマンが演じるジョン・チェンバースは実在の人物です。
🌱 今日のまとめ
本当にあった救出作戦にも、映画としての「脚色」が加えられていました。
- 1979年のイラン大使館人質事件で、偽の映画づくりによる救出作戦が行われた。
- CIAの関与は1997年まで秘密にされていた。
- 空港の追跡場面などは創作で、カナダの役割の描き方にも批判がある。
- 実話映画は、事実と脚色を分けて受け取ろう。
救出作戦の中心人物トニー・メンデス本人は、機密が解除されたあと、自らの本や講演で作戦について語るようになりました。映画の原作の一つも、メンデス自身の著書です。