国じゅうが「敵」と呼ぶスパイを、ひとりの弁護士が全力で弁護する──。そして、その弁護士が、武器ではなく言葉と交渉で、敵対する国どうしの捕虜交換を実現させます。冷戦の時代の実話です。この記事では、対話で争いを止める力を考えます。
戦争を始めるのは簡単でも、止めるのはとても難しいことです。武器を使わない争いの止め方の一つが、交渉(話し合い)です。
➡ この映画の主人公は、兵士でもスパイでもなく、保険の仕事をしていたひとりの弁護士です。
第二次世界大戦のあと、アメリカとソ連は、直接大きな戦争はしないまま、にらみ合いを続けました。これを冷戦と呼びます。
- 🕵️ 1957年・スパイの逮捕アメリカで、ソ連のスパイとしてルドルフ・アベルが逮捕されました。
- ✈️ 1960年・U-2撃墜事件ソ連の上空を偵察していたアメリカの偵察機が撃墜され、パイロットのパワーズが捕らえられました。
- 🧱 1961年・ベルリンの壁東西に分かれたベルリンに壁が築かれ、アメリカ人学生プライヤーも東ドイツで拘束されます。
- 🌉 1962年・グリーニッケ橋ベルリンのグリーニッケ橋で、アベルとパワーズの交換が行われました。
保険を専門とする弁護士ジェームズ・ドノヴァンは、ソ連のスパイ、アベルの弁護を頼まれます。世間からは「裏切り者の味方」と責められ、家族も危険にさらされます。
それでもドノヴァンは、「どんな人にも公正な裁判を受ける権利がある」と、アベルを全力で弁護し、死刑を避けることに成功します。
数年後、ソ連に捕らえられたアメリカ人パイロットとの交換交渉のため、ドノヴァンは壁が築かれたばかりの東ベルリンへ向かいます。
- ⚖️ 公正な裁判ドノヴァンは、相手が敵国のスパイでも、国のルール(憲法)は同じように守られるべきだと考えました。
- 🧍 「不屈の男」アベルは取り調べでも決して口を割りませんでした。ドノヴァンは、立場は違っても、その誠実さに敬意を持つようになります。
- 🤝 信頼が交渉を支える二人の間に生まれた信頼が、のちの交渉でも大きな意味を持ちます。
「敵だから、何をしてもいい」と考えると、自分たちの社会の大切なルールまで壊れてしまうかもしれません。相手が誰でも守るべきものとは何でしょうか。
特集第4回『シンドラーのリスト』の監督。ここでも、実在の人物の「正しい選択」を描きました。
『ファーゴ』などで知られるコーエン兄弟が脚本に加わり、緊張の中にもユーモアのある会話劇になっています。
『フォレスト・ガンプ』などで知られる名優。粘り強く、ユーモアを忘れない交渉人を演じました。
静かで誠実なスパイを演じ、アカデミー助演男優賞を受賞。特集第3回『ダンケルク』では、小さな船で兵士を救うドーソンを演じています。
ドノヴァンの交渉から、争いを話し合いで止めるヒントが見えてきます。
🌱 今日のまとめ
武器ではなく言葉で、敵対する国どうしが人を取り戻しました。
- 冷戦は、米ソが直接戦わずににらみ合った時代。
- ドノヴァンは、敵国のスパイにも公正な裁判を受ける権利を守った。
- 1962年、グリーニッケ橋で捕虜交換が実現した。
- 相手を人として見ることが、対話の出発点になる。
グリーニッケ橋は、東西ドイツの境にかかる橋で、冷戦中に何度かスパイの交換が行われたことから「スパイ橋」とも呼ばれました。今はふつうに渡ることができる橋です。