海岸に取り残された何十万人もの兵士。迎えに来たのは、軍艦だけではなく、ふつうの人たちの小さな船でした。戦争映画なのに「勝つ」話ではなく「逃げて、生きて帰る」話。この記事では、その意味を考えます。
- 1917 命をかけた伝令
- 西部戦線異状なし
- ダンケルク(この記事)
- シンドラーのリスト
- 硫黄島からの手紙
- ガンジー
- ブリッジ・オブ・スパイ
- ホテル・ルワンダ
戦争の物語というと、敵を倒して勝つ話を思い浮かべるかもしれません。でも『ダンケルク』が描くのは、追いつめられた兵士たちの撤退(しりぞくこと)です。
➡ 「逃げる」ことは負けなのでしょうか。命を守ることも、大きな勇気なのではないでしょうか。
1940年5月、第二次世界大戦の初期。ドイツ軍の攻撃で、イギリス・フランスなどの連合軍は、フランス北部の港町ダンケルクに追いつめられました。
- 🚢 ダイナモ作戦1940年5月下旬から6月4日にかけて行われた、海をわたってイギリスへ兵士を逃がす救出作戦。
- 👥 約33万8000人最終的に救い出された兵士の数。そのうち約11万人はフランス兵でした。
- ⛵ 民間の船も参加漁船やヨットなど、ふつうの人たちの小さな船が数多く駆けつけ、浅い海岸から兵士を運びました。
イギリスでは今も、困難のときに市民が力を合わせることを「ダンケルク・スピリット(ダンケルク精神)」と呼ぶことがあります。
海岸では、若い兵士トミーが、なんとか船に乗ろうと必死です。空からは敵機が襲い、船に乗っても沈められるかもしれません。
イギリスの港では、ドーソンさんが息子たちと、自分の小さな船で海峡をわたる決心をします。空では、パイロットのファリアが、燃料の残りを気にしながら敵機と戦います。
陸・海・空、3つの物語が少しずつ近づき、やがて一つに重なっていきます。
この映画は、長さのちがう3つの時間を交互に見せる、ふしぎな作りになっています。
- 🏖️ 陸(海岸)=1週間トミーたち兵士が、脱出を待つ1週間。
- 🌊 海=1日ドーソンさんの小さな船が、海をわたる1日。
- ✈️ 空=1時間パイロットが、燃料が切れるまで戦う1時間。
同じ出来事でも、立場によって見えるもの・感じる時間はちがいます。歴史を学ぶときも「誰の目から見た出来事か」を意識すると、見え方が変わります。
イギリス出身の監督。『ダークナイト』『インセプション』、のちに『オッペンハイマー』でアカデミー賞を受賞しました。この映画では、セリフをできるだけ少なくし、映像と音で緊張感を伝えています。大画面のIMAXカメラを多く使ったことでも知られます。
海岸から生きて帰ろうとする若い兵士。名前も背景もほとんど語られない「ふつうの兵士」です。
自分の船で兵士を迎えに行く民間人。静かで強い決意を見せます。
空で仲間の船を守るパイロット。顔がほとんど見えないまま、行動で語ります。
桟橋で撤退を指揮する海軍の中佐。
- ① 「迎えに行く」勇気ドーソンさんは兵士ではありません。それでも危険な海へ、自分から向かいました。
- ② 「生きて帰る」ことへの見方映画の終わりで、帰ってきた兵士たちは「逃げてきた」と恥じます。でも、人々は温かく迎えます。
- ③ 恐怖は「弱さ」ではない怯える兵士も描かれます。怖いと感じるのは、人として当たり前のことです。
➡ 「勝ったか負けたか」だけでは、戦争の本当の姿は見えません。
🌱 今日のまとめ
戦争の中で守られた、いちばん大切なもの──それは「命」でした。
- 1940年、ダイナモ作戦で約33万8000人の兵士が救われた。
- 軍艦だけでなく、民間の小さな船が救出を支えた。
- 陸1週間・海1日・空1時間。立場で見える時間はちがう。
- 勝ち負けだけでなく、命を守ることの意味を考えよう。
撮影には、実際のダンケルクの海岸が使われ、6000人以上のエキストラが参加したといわれます。また、救出作戦に参加した「本物の小型船」の一部も撮影に使われました。