お金もうけが目的だった一人の実業家が、やがて全財産をかけて1100人以上の命を守ろうとする──。ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)の中で起きた実話です。この記事では、「差別がどこまで人を追いつめるか」と「一人の選択の重さ」を考えます。
- 1917 命をかけた伝令
- 西部戦線異状なし
- ダンケルク
- シンドラーのリスト(この記事)
- 硫黄島からの手紙
- ガンジー
- ブリッジ・オブ・スパイ
- ホテル・ルワンダ
ひどいことが「当たり前」になっている社会で、一人の人間に何ができるのでしょうか。
➡ シンドラーは、はじめから英雄だったわけではありません。迷い、変わっていった普通の人だったからこそ、私たちに問いかけるものがあります。
1933年に政権をにぎったナチス・ドイツは、ユダヤ人などを「劣った人々」として差別し、権利をうばっていきました。第二次世界大戦中には、強制収容所などで約600万人のユダヤ人が殺害されたとされます。これをホロコーストと呼びます。
いきなり大量虐殺が始まったのではありません。言葉による差別 → 権利の制限 → 住む場所の隔離(ゲットー)→ 収容所と、少しずつ進みました。「おかしい」と声を上げにくい空気が、それを支えてしまいました。
第二次世界大戦中のポーランド・クラクフ。ドイツ人実業家オスカー・シンドラーは、ナチスの幹部に取り入り、ユダヤ人を安い労働力として使う工場で成功します。
しかし、ユダヤ人への暴力や虐殺を目の当たりにする中で、彼の心は変わっていきます。会計係のシュテルンとともに、工場で働く人の名前を書いた「リスト」をつくり、財産を使って一人でも多くの命を救おうとします。
- 🎞️ ほぼ全編モノクロ記録映像のような白黒で撮られ、「過去の出来事」ではなく「本当にあったこと」として迫ってきます。
- 🧥 赤いコートの少女白黒の中で、一人の少女のコートだけが赤く描かれます。大勢の犠牲者の中の「一人」に、シンドラーも観客も気づかされる場面です。
- 🏆 アカデミー賞7部門作品賞・監督賞・脚色賞・撮影賞・編集賞・美術賞・作曲賞を受賞しました。
なぜ監督は、少女のコートだけに色をつけたのでしょう? 「数」ではなく「一人」を見ることと関係があるかもしれません。
『E.T.』『ジュラシック・パーク』などで知られるアメリカの監督。自身もユダヤ系で、この作品で初めてアカデミー監督賞を受賞しました。この作品の監督料を受け取らなかったことでも知られています。原作はトマス・キニーリーの小説(原題『Schindler's Ark』)です。
魅力的で抜け目のない実業家が、少しずつ変わっていく姿を演じました。
シンドラーの会計係。リストづくりを支えるユダヤ人です。
収容所の所長。「普通の顔をした加害者」の恐ろしさを体現しました。
- ① はじめは利益が目的ナチス党員で、戦争で金もうけをしようとした実業家でした。
- ② 見て、知って、変わった目の前の暴力を見て、見て見ぬふりをやめる道を選びました。
- ③ 失ったもの・守ったもの最後には財産のほとんどを使い、1100人以上の命を守ったとされます。
➡ 完ぺきな人ではなくても、「今、自分にできること」を選ぶことはできる。それがこの映画の問いかけです。
🌱 今日のまとめ
恐ろしい時代にも、一人の選択が人の命を守りました。
- ホロコーストでは約600万人のユダヤ人が殺害されたとされる。
- 差別は、言葉から始まり、少しずつ進んでいった。
- 白黒の中の「赤いコート」は、数の中の一人を思い出させる。
- 完ぺきでなくても、今できることを選ぶことはできる。
映画の最後には、シンドラーに救われた実際の人々と、その役を演じた俳優たちが、エルサレムにあるシンドラーの墓に石を置いていく場面があります。ユダヤの伝統で、石は故人をしのぶ気持ちを表します。